新規に開業し、個人事業主としてスタートした人や法人を設立し事業をスタートした人は、まずは仕事で使用するパソコンやプリンターなどの備品や設備を購入すると思います。
ここで購入したものが全額すぐに費用になるかというと、費用とできない場合もあるのです。
というのも、固定資産の費用処理方法には複数あり、これを知らないと税金で損をしてしまったり、逆に税金を間違えて少なく納税してしまうことになったりします。
そのため、税金で損をしないように、または税金を間違って計算してしまわないように、この記事では固定資産の償却方法について、概要を解説したいと思います。
この記事を読むとわかること
- 取得価額に応じた固定資産の費用処理方法
- 税金で損をしないための、固定資産の費用処理戦略
固定資産の処理方法はいろいろある
そもそも固定資産って何をさすの?という疑問を持つ方もいるかもしれません。
その場合は大雑把ですが、パソコンやプリンターなどの機械装置やデスクやオフィスチェアなど備品などの設備全般のことを示していると思ってください。
これらの固定資産は購入後、すぐに費用にできるわけではありません。
通常は購入時に資産として計上したあとに、その資産ごとの耐用年数に応じて毎年少しずつ減価償却(=費用)として処理していきます。
ですが、以下のように一定の金額未満の固定資産に適用できる特例も存在するのです。
- 20万円未満:一括償却の適用(条件あり)
- 30万円未満:少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の適用(条件あり)
- 30万円以上:特例はなく、減価償却が必要
それぞれの方法の内容について、順番に説明していきます。
10万円未満の固定資産
取得価額が10万円未満の固定資産は、全額を購入した年の費用とすることができます。
なお、使用可能期間が1年未満の固定資産に関しても、その金額に関係なく購入した年の経費とできます。
この制度は個人事業主や法人規模などによる制限はなく、誰でもが利用できる方法です。
私の場合、10万円未満の機器は消耗品費で記帳しています。
20万円未満の固定資産
取得価額が10万円以上、20万円未満の固定資産については、各年の取得価額の合計額の3分の1に相当する金額を3年間にわたっての各年分の減価償却費として経費とすることができます。
一括償却という名称ですが、全額を一括で費用とするわけではないので、間違えないようにしてください。
注意点は、以下の二つとなります。
- 3年経過前に除却・売却した場合でも、一括償却をそのまま継続する必要がある
- 少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例を使用できる場合は、そちらのほうが有利
30万円未満の固定資産
取得価額が10万円以上、30万円未満の固定資産については、取得価額の合計額が300万円に達するまでは、その全額を購入した年の費用とすることができるという特例があります(少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例)。
例えば28万円のパソコンを11台購入し、合計で308万円を支払ったとしましょう。この場合、取得価額の合計額が300万円に達するまでの部分(11台のうち10台)は、購入した年の費用とすることができるのです。
11台目も含めると合計額が300万円超となってしまうため、この特例の金額に含めることはできません。
また、この特例を使用できるのは個人事業主であれば青色申告個人事業主、法人の場合は中小企業であることが条件となっています。
白色申告の方は使用できない特例なので、注意が必要です。
この特例の詳細は、国税庁の制度解説『No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例』を確認するのもいいでしょう。
30万円以上の固定資産
取得価額が30万円以上の固定資産については資産として計上し、その資産の耐用年数に応じた期間に亘って減価償却費を計上し、費用化していくことになります。
減価償却費の計算方法もその資産種類に応じて複数ありますが、それについてはこの記事では割愛させていただきます。
また、固定資産を税法上何年で償却するかについては、予めルール(耐用年数)が定められています。
そのため中古資産などの特殊なケースを除き、この耐用年数に基づいて償却することになります。
お金は資産の購入時に一気に支出していきますが、全額が同じタイミングで費用として認められるわけではないので、注意が必要です。
消費税の経理処理方法に注意
ここまでに記載してきた資産の金額(取得価額)の判断基準ですが、同じ資産を購入した場合であっても、消費税の経理処理方法に応じて異なる金額となります。
つまり、取得価額は税込経理を選択している場合は消費税を含んだ金額で、税抜経理を選択している場合は消費税を含まない金額で判定することとなります。
例えば税抜28万(税込30.8万円)のパソコンを買った場合、税抜経理を採用していれば30万円未満の固定資産として少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の制度が使用できます。
一方で税込経理を採用していれば取得価額は30.8万円となり、耐用年数に亘り減価償却費を計上することになります。
なお、免税事業者の場合は問答無用で税込経理を選択していることになりますので注意が必要です。
おわりに
上記の制度をうまく利用してできるだけ支払う税金を抑えるためには、以下のようなステップで費用処理の方法を選択していけばよいでしょう。
- ステップ1:10万円未満の固定資産は消耗品費として費用処理
- ステップ2:10万円以上、30万円未満の固定資産は合計額が300万円を超えない範囲で少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例を使用
- ステップ3:10万円以上、20万円未満でなおかつ減価償却期間が3年以上の固定資産は一括償却を使用
- ステップ4:ステップ1〜3に当てはまらない固定資産に関しては、通常の減価償却を行う
固定資産の種類や数が多いと管理が大変かもしれませんが、税金で損をしないよう、または税額を間違ってしまわないように、この記事を参考に正しく経理処理をしてもらえると幸いです。